世界中で使われている金属のうち、重量でいうと95%を鉄系材料が占めていると言われています。鉄系材料はそれだけ幅広く使用されており、旋盤加工における主要な材料も鉄系のものです。
ここでは、旋盤加工でよく使われている鉄系材料の種類と特徴をご紹介します。
SS400
SS400は、正式名称を「一般構造用圧延鋼材」と言います。流通量が多くて非常に安価なだけでなく、強度が高くて加工もしやすいため、建物や船舶、車両などの構造物用材料として幅広く使用されています。一方で、熱処理で強度を高めることができないといったデメリットもあるため、強度が必要な場合には、次に紹介するS45Cを使用することが多いです。
S45C
S45Cは、正式名称を「機械構造用炭素鋼鋼材」と言います。鉄に炭素を混ぜた合金が鋼であり、S45Cの場合は炭素(Carbon)を0.45%含んだ材料です。炭素の含有量の違いで、S15CやS50Cなどの類似材料が存在しています。S45Cは加工性が良く、熱処理によって強度を増すこともできます。また、上述したSS400ほどではないものの、価格が比較的安価なので幅広く使われている材料です。
SCM
SCMは、正式名称を「クロムモリブデン鋼鋼材」と言い、クロモリやクロモリ鋼とも呼ばれています。鋼にクロムを加えて焼入れ性を向上させたクロム鋼に、さらにモリブテンを加えることでより焼入れ性を高めた材料です。焼入れ・焼戻しにより強度を高めることができます。強度が高いだけでなく、粘り強さもあるため、自動車部品などの信頼性が求められる場面でもよく使われています。
SUS304
錆で脆くなるという鉄の弱点を補うために、クロムやニッケルなどを加えて耐食性を高めたものがステンレスです。SUS304はステンレスの中で代表的な材料であり、耐食性が求められる用途で幅広く使用されています。SUS304は強度が高く非常に硬いため、旋盤加工を行うときには工具に負荷がかかりやすくなっており、注意が必要です。また、粘り強さがあるため、旋盤加工がやや難しい材料だといえます。
SUS303
SUS304と類似の特性を持ちながら、より加工性を高めたものがSUS303です。旋盤加工をする上では、SUS304よりもSUS303の方が加工がしやすくなっています。一方で、SUS304よりも耐食性が下がっていたり、溶接がしにくいといったデメリットもあります。
SUS316
モリブデンを加えることでより耐食性を向上させたステンレスがSUS316です。SUS304よりも耐食性がよく、海水や薬品に触れる部分によく使用されています。ただし、SUS304よりも材料費は高価です。
まとめ
旋盤加工で使われている代表的な鉄系材料について、ご理解いただけたでしょうか。ここで紹介した以外にも用途によっては難加工材と呼ばれる特殊な材料を使ったり、鉄以外の材料を使って旋盤加工をすることもあります。
どのような材料があるのかを知り、用途に合った適切な材料を選定できるようにしましょう。