「外注先が廃業してしまって、この部品を作れるところを探しています」。この書き出しの問い合わせが、当社にはここ2〜3年で、下手をすると100件以上来ています。月に何件も、です。経済安全保障の観点から「国内でものづくりを維持する」ことが国の戦略になった今、現場ではすでに、静かな供給危機が始まっています。この記事では、100件の相談を受けてきた町工場から見えた実態と、「実際に受けられた仕事」と「受けられなかった仕事」を分けたものは何だったのかを、正直にお話しします。
結論:相談100件のうち、受けられたのは5〜10件
最初に正直な数字を書きます。廃業関連の相談およそ100件のうち、当社が実際にお受けできたのは、おそらく5〜10件程度です。技術的に作れない物だったから、ではありません。最大の理由は単価です。
なぜ受けられないのか:「安すぎる単価」が廃業の原因でもある
廃業した外注先の多くは、長年の付き合いの中で、とんでもなく安い単価で作り続けてきています。設備の償却が終わり、ベテランが一人でやっている工場だから成立していた値段です。その会社が廃業したとき、同じ単価で引き継げる会社は、ほぼ存在しません。つまり、こういうことです。安すぎる単価は、外注先の廃業の原因であると同時に、代わりが見つからない原因でもある。「受けたくても受けられない」相談を100件近く見送りながら、当社はこの構造を痛感してきました。
受けられた仕事との違い:早めの相談と、単価の見直し
一方で、お受けできた仕事には共通点があります。
- 廃業の「前」に相談が来た。いま当社では、数年以内の廃業を予告している仕入先からの切り替えを見据えて、とあるパイプ(片側おねじ・片側めねじ、長さ最大1500mm程度)の試作トライを進めています。現行の外注先が現役のうちに始めたからこそ、じっくり検証できています。
- 単価を現在の相場で見直す前提があった。「前と同じ値段で」ではなく、「いくらなら継続供給できるか」から話が始まった案件は、ほぼ形になっています。
- 図面や現物が揃っていた。図面がなくても現物があれば当社で図面化できます。何も残っていないのが一番困ります。
調達担当の方へ:廃業リスクの棚卸しを
お付き合いのある加工外注先について、次の3つを確認してみてください。
- 代表者の年齢と後継者の有無
- 「機械が壊れたらやめる」と言われたことがないか
- その会社にしか図面・ノウハウがない部品はどれか
ひとつでも引っかかったら、切り替え先の検討は「今」です。廃業後の駆け込みは、単価も納期も選択肢も、すべて悪くなります。
よくある質問
Q. 廃業した外注先と同じ単価で作ってもらえますか?
正直に申し上げて、難しい場合が多いです。まず図面を拝見し、現在の相場で誠実にお見積りします。
Q. 図面が廃業した会社にしかなく、手元にありません。
現物があれば採寸して図面化できます。摩耗した現物からの復元もご相談ください。
Q. まだ廃業していませんが、先に試作を頼めますか?
はい、それが最善です。当社でも現在、廃業予定の外注先からの切り替えを試作トライから進めている実例があります。
まとめ
サプライヤー廃業は、ニュースになる前から現場で起きています。相談100件・受けられたのは5〜10件という当社の実感値が、その厳しさの証拠です。分かれ目は「早さ」と「単価の見直し」。手遅れになる前の一手を、一緒に考えさせてください。