海水につかる部品を金属で作ると、必ず「錆」との戦いになります。海洋開発・海底通信インフラといった国の重点投資分野で、いま静かに需要が増えているのが「樹脂の精密パイプ」です。ただし、精密な樹脂パイプを作れるところは、実はほとんどありません。この記事では、樹脂パイプ業界の「精度の常識」と、当社が高密度ポリエチレン(HDPE)の精密切削で取り組んでいることをお話しします。
結論:精密な樹脂パイプは「切削でしか」作れない
世の中の樹脂パイプの多くは、押出成形や「板を巻いて」作られています。量産には最適ですが、寸法精度はかなり荒く、公差の細かい用途にはそのままでは使えません。精密な寸法が必要な樹脂パイプは、削り出しで作るしかない――これが業界の実情です。そして樹脂の切削、特に薄肉パイプの切削は、金属とはまったく別のノウハウを要求されます。
なぜ海で樹脂、なぜ高密度ポリエチレンか
当社が海洋インフラ向けの部品で扱っている高密度ポリエチレンは、次の特性を持つ材料です。
- 海水などによる腐食に強い。金属のように錆びません。
- 吸水しない。水を吸って寸法が変わる樹脂もある中で、水まわりに向いた材料です。
- 切削で精密に仕上げられる。成形では出ない公差を、削りなら狙えます。
一方で弱点もあります。樹脂は温度や内部応力で寸法が動きやすく、削った直後と時間が経った後で寸法が変わることすらあります。「削れば精密になる」ほど甘い世界ではありません。
実例:試作を重ねて「今までで一番いい」と言われるまで
当社では現在、海洋インフラ向けの高密度ポリエチレン製パイプを製作しています。仕上がりの肉厚は3mm程度、寸法は百分台(0.0X mm)の管理が求められる品物です。樹脂は切削中も削った後も動くので、最初から狙いどおりには仕上がりません。社長が文字どおり死ぬほど試作を繰り返し、材料の動き方を織り込んだ削り方にたどり着いてようやく、安定して精度が出るようになりました。
お客様からは「今まで作ってもらった中で一番いい」という評価をいただき、その後は別サイズの試作依頼が次々に来ています。正直、うれしい悲鳴です。
なお、当社の樹脂薄肉パイプは仕上がり肉厚3mmが目安です。それより薄い要求は材料の変形リスクが大きく、正直にお断りすることもあります。
こんな用途に向いています
- 海水・薬品に触れる箇所の、錆びないパイプ・スリーブ
- 金属では電気や磁気の面で不都合がある箇所(樹脂は絶縁性・非磁性)
- 成形品では精度が足りない、単品〜小ロットの樹脂パイプ
よくある質問
Q. 樹脂パイプの肉厚はどこまで薄くできますか?
仕上がり肉厚3mm程度までを目安としています。用途・形状によりますので図面でご相談ください。
Q. 高密度ポリエチレン以外の樹脂も削れますか?
はい。用途に合わせて材質からご提案できます。まず「何に使うか」をお聞かせください。
Q. 金属部品を樹脂に置き換える相談はできますか?
できます。軽量化・防錆・絶縁を目的とした置き換え提案の実績があります。
まとめ
「樹脂パイプは精度が出ない」というのは、成形品の話です。切削なら、錆びない材料で精密な寸法を狙えます。海まわり・水まわりの部品で錆にお困りの方、成形品の精度に限界を感じている方は、一度図面をお見せください。
金属を含めた対応範囲は設備一覧を、加工の基礎知識は旋盤加工FAQをご覧ください。
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